中学受験算数

中学受験の「算数」の勉強で一番大事なのは「解法」です。「自分の感覚に合わない解法」で教わると本来わかるものもわからなくなります。算数が苦手だと言っていた子どもでも「自分にピッタリの解法(考え方)」に出会ったその日から算数がどんどん楽しくなって得意科目になったりするんです。

2007年12月

最小公倍数5

前回の問題「仕事算」の解説で用いた「最小公倍数」が
よくわからない、という質問をいただきました。

ので、習うより慣れろ、でいくつか例を記します。

結論から言うと、別に「最小公倍数」でなくてもかまいません。

極端にいえば、2数を単純に掛け合わせた数字が一番確実です。

あとは、その後の計算のやりやすさとの兼ね合いで判断すること
になります。

実戦的には、2数の「公倍数」であればOKです。

それでは前回の問題を再掲示して解法例をしめします。


≪仕事算≫
兄弟が荷物をトラックに積み込む仕事を請け負った。
兄1人では、すべての荷物を積み込み終わるのに20分かかり、
弟1人では、すべての荷物を積み込み終わるのに30分かかる。
兄弟2人で積み込むと何分で終わるか?

--------------------------------------------
■解法1

仕事全体を20と30の「最小公倍数60」とおくと、

60÷20=3
60÷30=2
60÷(3+2)=12

正答 12分

--------------------------------------------
■解法2

仕事全体を 1 とおくと、

1÷20=1/20
1÷30=1/30

1÷(1/20+1/30)
=12

正答 12分

---------------------------------------------
■解法3

仕事全体を 600 とおくと、(20×30=600)

600÷20=30
600÷30=20

600÷(30+20)=12

正答 12分

---------------------------------------------
■解法4

仕事全体をなんとなく 120 とかにしてみても、

120÷20=6
120÷30=4

120÷(6+4)=12

正答 12分

----------------------------------------------
■解法5

仕事全体をあなたの 自家用車のナンバー に設定すると、

ナンバー÷20=X
ナンバー÷30=Y

ナンバー÷(X+Y)=12

正答 12分

----------------------------------------------
■解法6

仕事全体をあなたの 携帯番号(11桁) に設定すると、

携帯番号÷20=X
携帯番号÷30=Y

携帯番号÷(X+Y)=12

正答 12分

----------------------------------------------

きりがないのでこのへんでやめますが(笑)、どんな数字に設定しても
答が同じになる意味をあらためて考えてみてくださいね。


仕事算の特徴5

前号では旅人算の典型パターンをやりました。

前回の解説をご覧になってから今回の解説をご覧下さいね。


今回は「仕事算」です。


≪仕事算(仮)≫
兄弟が2340個の荷物をトラックに積み込む仕事を
請け負った。兄1人では、すべての荷物を積み込み終
わるのに20分かかり、弟1人では、すべての荷物を
積み込み終わるのに30分かかる。兄弟2人で積み込
むと何分で終わるか?

  
    kanarazu jibun de kangaete ne!


・ヒント→2340は30でも20でも割り切れるよ!


■解説

2340÷20=117(兄は1分に117個積む)
2340÷30=78(弟は1分に78個積む)

2340÷(117+78)=12 

正答 12分

あれ、なんだか前回の旅人算と似てますね。

というか、そっくりそのまま!笑

(その意味はあとまわしにします。)



実は、上の問題は「仕事算」とは言えないんです。

なのでタイトルを(仮)と記しました。

では(仮)から → 本当の「仕事算」にするには
どうすればいいか?

それは「仕事全体量」の具体的数値を消す!

これでOK。

「仕事全体の具体的数値」が記されていない、
というのが「仕事算」なのです。

では、上の仮問題から2340個という具体的数値を
削って以下のように再提示します。



≪仕事算≫
兄弟が荷物をトラックに積み込む仕事を請け負った。
兄1人では、すべての荷物を積み込み終わるのに20分
かかり、弟1人では、すべての荷物を積み込み終わるの
に30分かかる。兄弟2人で積み込むと何分で終わるか?

    jibun no chikara de kangaete ne!


仕事全体量の数字を削除しただけで、一気に難易度が
上がっているのがわかると思います。

でも、前回の旅人算の解説を見れば簡単に解けるはず。
(数字もいっしょですから。)


-------------------------------------------------------
■解法その1

「仕事量全体(個数)」を20と30の「最小公倍数60個」
とおく。

60÷20=3(兄の1分あたりの仕事量)
60÷30=2(弟の1分あたりの仕事量)

60÷(3+2)=12

正答 12分
-------------------------------------------------------
■解法その2

仕事を終わらせるのにかかる時間の比は、

兄:弟=20:30=「2:3」

仕事の速さはかかる時間の「逆比」なので(時間がかかる方がノロマ)

兄の仕事の速さ:弟の仕事の速さ=「3:2」

仕事全体量(個数)は、3×20=60

60÷(3+2)=12

正答 12分
--------------------------------------------------------------

前回の旅人算との類似性、というか まったく同じ問題である
という認識を誰でも持てると思います。

どちらも問題文中の具体的な数字を条件からはずすことによって、
比を使って解かざるを得なくなっていますが、
それを難易度が上がったと見るか下がったとみるかが
運命の分かれ道!

難易度が下がって簡単じゃん!と思いながら比を縦横無尽に
使いこなせるようになれば怖いもの無し!

ところで、「仕事算」の解説で市販の参考書などではよく

   「仕事全体量」を「1」とおく。

と示されていますので、ちょっとそれでやってみましょう。

■解説

仕事全体を1とおくと

兄の1分あたりの仕事の速さ=1÷20=1/20
弟の1分あたりの仕事の速さ=1÷30=1/30

 1÷(1/20+1/30)
=1÷(3/60+2/60)
=1÷5/60
=12

正答 12分


おわかりと思いますが、仕事全体を1とおくと、
途中が必ず分数計算になり、
その分母は20と30とかを通分する必要があり、
結局「最小公倍数」を求める作業をすることになります。

だったら最初から仕事全体を「最小公倍数」にしておけば
いいじゃないか、ということです。

それから、1とか分数とかでは量的なイメージがつかみにくい、
という理由もあります。

この問題では仕事全体を「荷物60個」と具体的にして
やることで作業イメージがつかみやすくなっています。

このことは非常に重要で、一般に「比」を使うと抽象性が
増す、すなわち高度な認知能力を必要とすると思われがち
です。

しかし、実は反対で、適切な比の使い方さえマスターして
いれば、比を使うことで逆に簡単な具体性に落とし込んで
楽に問題を解くことができちゃうの。


※次回に続く・・・

マラソンコース25

■前回の問題はこれでした。

≪マラソン問題≫
マラソンコースになっている2地点A、Bの距離は42.195km
である。甲はA地点からB地点へ行くのに150分かかり、
乙はB地点からA地点に行くのに120分かかった。
甲がA地点から、乙がB地点から向かい合って同時に出発
したとすると出会うのは何分後か。  



         mazu jibun de kangaete ne !



前回の解説

マラソンコースの距離を150と120の最小公倍数600に
セッティングする。

600÷150=4(甲の分速)
600÷120=5(乙の分速)

600÷(4+5)=66と2/3

正答 66と2/3分


しかし、これでは、

いきなり「距離」を最小公倍数600とするのが唐突過ぎる
との声が聞こえてきそうです・・・

それならば、先に甲と乙の「速さ」を出してやってみましょう。

AB間のマラソンコースを甲は150分、乙は120分かかるので、


速さの比は、甲:乙=120:150 
【距離が等しいとき時間と速さは逆比】


この比を簡単にすると、甲:乙=4:5(分速)

この「速さの比」をもとに「距離」を求めると、

・甲でやれば、4×150=600 【分速×分=距離】
・乙でやれが、5×120=600 【分速×分=距離】

甲乙どちらでやっても「距離は600」となります。

距離さえでてしまえば
(この段階で42.195kmはどこかへ飛んでってます。笑)

あとは、

600÷(4+5)=66と2/3 
【距離÷速さの和=出会いの時間】

正答 66と2/3分


同じ問題に対して
前回は、最初に、距離を2人のかかる時間の数値の
最小公倍数と設定する。

今回は、最初に、速さを2人のかかる時間の
逆比で求める。

という違いがあります。

これは「鶏が先か?卵が先か?」というお話。

結論から言えばどちらでもOK。

大事なのはこのように比を使う感覚。

この感覚があれば、旅人算以外の例えば仕事算でもまったく
同じように解くことができます。

ということで次回は仕事算をやりましょう。

でもその前に、鶏卵禅問答の仕上げです。

--------------------------------------------------

≪仕上げ問題≫
AB2地点間の距離は2340mである。
兄はA地点からB地点へ行くのに20分かかり、
弟はB地点からA地点に行くのに30分かかる。
兄がA地点から、弟がB地点から向かい合って
同時に出発したとすると出会うのは何分後か。



  kanarazu jibun de kangaete ne!


ヒント→2340は30でも20でも割り切れるよ!


ヒントをありがたがって、

2340÷20=117(兄は分速117m)
2340÷30=78(弟は分速78m)

出会うまでの時間は、

2340÷(117+78)=12 
【距離÷2人の速さの和=出会いの時間】


これでも答は12分と正解できます。

が、ちょこっと割り算がいやな感じです。(計算ミスしそう・・・)

下手に割り切れるがゆえの無駄時間。

ということで、鶏卵方式?でやりましょう。

そうです、2340mを完全無視。(shikato!)


----------------------------------------------------
解法その1

「距離」を20と30の「最小公倍数60」とおく。

60÷20=3(兄の分速)
60÷30=2(弟の分速)

60÷(3+2)=12
【距離÷2人の速さの和=出会いの時間】

正答 12分
-----------------------------------------------------


解法その2

時間の比は、兄:弟=20:30=「2:3」

速さは時間の「逆比」なので、

兄の速さ:弟の速さ=「3:2」

距離は、3×20=60(兄の分速×兄のかかる時間=距離)

60÷(3+2)=12

正答 12分
--------------------------------------------------------------


■マラソン問題でも仕上げ問題でも、
どうして問題文で具体的に数値指定された42.195や2340という
数字を無視して解けるのでしょうか?
どうして勝手な数字をセッティングしていいのでしょうか?
ここに比のバランス感覚を養う大きなヒントがあります。

実は、上記の問題では「距離をどんな数字に勝手に設定しても」
最終的な答は
いつでも同じになります。
別に最小公倍数でなくてもかまいません。疑り深い人はご自分で
勝手な数字を設定して解いてみてください。
(1でも2でも13でも2007でもなんでもOKです。)
こういうまじめな遊びを通して比の面白さを体感することが大事
なのです。



※次回に続く・・・

マラソンコース5

いきなりですが、
マラソンはなぜ42.195kmという中途半端な距離なんでしょう?

諸説あるようですが、第4回ロンドンオリンピックで当時の国王が、
「スタート地点は宮殿の庭で、ゴール地点は競技場のボックス席の前に」
と注文したためという話が有力です。(他にもいろいろあるようですが・・・)


さて、問題です。

≪問題≫
マラソンコースになっている2地点A、Bの距離は42.195kmである。
甲はA地点からB地点へ行くのに150分かかり、乙はB地点から
A地点に行くのに120分かかった。甲がA地点から、乙がB地点から
向かい合って同時に出発したとすると出会うのは何分後か。  


         mazu jibun de kangaete ne !



■解説

これは「出会い算」とすぐわかります。

ですから「2人の間の距離」と「2人の速さ」がわかれば、

・2人の間の距離÷2人の速さの和=出会いの時間

で終了です。

と考えると、まず「2人の間の距離」は42.195kmと
わかっているので、

これから、甲と乙の速さ(分速)を出せばいいのだ。

●甲の分速 42.195km÷150分=?
●乙の分速 42.195km÷120分=?

ところがこれだと計算が大変です。

なので、こういうときは、 


   「42.195kmを使わずに解く!」


どうすればいいかというと、


突然ですが、

150と120の最小公倍数を求める!
 
 → それは、600

ここで、AB間の距離を600と勝手に(笑)セッティング!

こうすれば、甲乙各々の速さは簡単にに出る!

●甲の分速 600÷150分=分速4
●乙の分速 600÷120分=分速5

ほとんど暗算めちゃ簡単。

あとは出会い算なので、


600÷(4+5)=66と2/3 
【2人の間の距離÷速さの和=出会いの時間】


正答  66と2/3分


なぜ、具体的な条件である42.195kmを使わずに勝手に距離を600とか置いて
解けてしまうのか考えてみてください。そこに旅人算で比を使う大きなヒントが
隠されています。



※次回に続く・・・

池の周りの兄と弟(2)5

前回の問題はこれ↓でした。

≪問題≫
ある池の周りを兄と弟が反対方向にまわると10分ごとに出会い、
同じ方向にまわると兄が弟を50分ごとに追い越す。
兄と弟の速さの比(兄:弟)はいくらか?

【式】
(5+1)÷2=3
(5−1)÷2=2

・正答 3:2(兄:弟)


この問題はモロに「パターン」なので、少ぉし難易度を上げて みましょう。


≪問題≫
ある池の周りを兄と弟が反対方向にまわると10分ごとに出会い、
同じ方向にまわると兄が弟を50分ごとに追い越す。
この池を弟は何分で1周するか?


maeno kotae wo hint nishite jibunde kangaete ne!








【解法その1】

・時間の比が1:5なので速さは逆比で5:1

 「兄と弟の速さの和」:「兄と弟の速さの差」=5:1

すなわち、「兄+弟」:「兄−弟」=5:1

 大小2数の「和」と「差」がわかっているとき2数は「和差算」ですぐ出る!
 
(5+1)÷2=3 
(5−1)÷2=2
  
  兄:弟=3:2(速さの比)

-----------ここまでは同じ----------------

弟の速さが2と求まったので、あとは「池1周」の距離がわかれば、

 池1周の距離÷弟の速さ

という式で、弟が1周する時間はすぐ出る。

「池1周」の距離を出会いの条件を使って求めると、

(3+2)×10=50 【2人の速さの和×出会いの時間=出会いの距離(池1周)】

これで、

「池1周の距離」が「50」とセッティングできたので、

あとは、

50÷2=25 【池1周の距離÷弟の速さ=かかる時間】

正答 25(分)


この解法で十分だと思いますが、もっと速く解きたければ・・・



【解法その2】もっと速い解法

・兄:弟=3:2(速さの比)を求めるところまでは同じですが、

ここで、兄の速さ・弟の速さ・速さの和・速さの差を同列に並べます!

  兄:弟:和:差
   3:2:5:1

すると、弟:差=2:1 とすぐわかりますね。

「弟の速さ」:「速さの差」=2:1なら「時間」はその逆比で1:2になります。

すなわち、

「弟のかかる時間」:「追いつきの時間」が1:2ということです。

ここで、追いつきの時間は50分とわかっているので、

弟のかかる時間はその1/2の25分と瞬間的にわかって終了です。

正答 25分


■旅人算の学習においては最初は兄や弟など一人一人の「速さ」のイメージを
しっかりつけて、
その後は、出会いのときの「速さの和」や追いつきのときの「速さの差」も
一人一人の速さと同じ感覚で扱えるようにしていくことが
難易度が上がった問題を解くときに役立ちます。

同じ感覚で扱う、とは、比のバランスで見渡せる力をつける、ということです。


尚、この問題で弟のかかる時間ではなく「兄のかかる時間」を問われると、
答が分数になるのでヤマカン正解が減って正答率が下がります。
ということで、兄についてもやってみてください。

※正答 16と2/3分(兄が池1周にかかる時間)



次回に続く・・・


逆比と和差算のあわせ技

前回の問題をもう一度。

≪問題≫
ある池の周りを兄と弟が反対方向にまわると10分ごとに出会い、
同じ方向にまわると兄が弟を50分ごとに追い越す。
兄と弟の速さの比(兄:弟)はいくらか?



      mazuha jibunde kangae tene!



解答解説

・出会いの距離÷2人の速さの和=出会うまでの時間(10分)
・追いつきの距離÷2人の速さの差=追いつくまでの時間(50分)

ここで「出会いの距離」も「追いつきの距離」も「池1周」で等しい!!
この「距離が等しい」ということに気づくのが最大のポイント!

また10分:50分=1:5

上の言葉の式を書き直すと、

・距離(池1周)÷2人の速さの「和」=1(かかる時間の比)
・距離(池1周)÷2人の速さの「差」=5(かかる時間の比)

すると、これを見ただけで、「和」:「差」=5:1(1:5の逆比)とわかる。

この逆比は本来「距離が等しいとき、速さと時間は逆比になる」ということによるが、

それを意識しなくても、式の形だけで「逆比」とわかるはず。

あとはこの2人の速さの「和=5」と「差=1」から兄と弟に切り分ければよい。

切り分けるには「和差算」を使えば簡単だ。

「和差算」とは大小2数があって、その和と差がわかっているとき、
大小2数は、

・大の数=(和+差)÷2
・小の数=(和−差)÷2

で求まるという算法だ。

よって、

(5+1)÷2=3
(5−1)÷2=2

正答 3:2(兄:弟)


旅人算の問題において出会いと追いつきの両方の条件が入っている場合は、
一見ややこしそうだけど、出会い算は速さの「和」、追いつき算は速さの「差」で
勝負すると決まっているので、和差算との関係がまるでハネムーン♪なの。


※和差算については次回に詳しく。
【講師プロフィール】

吉武瞳言(6000.jp)

小学生に算数を教えるには、子ども一人ひとりの「思考感覚」に寄り添うことが一番大事。算数はライフワーク。大人のための「算数大学.jp」も運営中。

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音響彫刻家。受験算数・公務員試験の数的処理・SPI3非言語分野を教えてます。解法がすべて。
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